『暗黒残酷監獄/城戸喜由』:この家には悪魔がいる。

個人的こんな方におススメ♬

 

こんにちは、RKOです。本日は2020年2月刊行、城戸喜由作「暗黒残酷監獄」をご紹介します。第二十三回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品です。

 

本作は選考時に選考委員の評価がきれいに分かれた事は耳にしていましたが、読んで納得しました。とにかく主人公である高校生の椿太郎(ちゅんたろう)がひねくれています。これまでも探偵像というものは一癖も二癖もあるキャラクターですが、それとはまた異なる人物像が構築されています。とにかく言動の全てが腹立たしい人物で、これまであまり見ない斬新なキャラクター像でした。このひたすら嫌な人物を語り手とした物語には新しさを感じてしまいます。はっきり言って評価が分かれる作品(3:7ぐらい?)だと思いますが、非常に挑戦的で且つ意欲的な作品であると個人的には感じました。

 

ズバリ、この作品は、

『メフィスト賞作品のような尖ったミステリーを読みたい』人向けです。

 

概要

 

同級生の女子から絶えず言い寄られ、人妻との不倫に暗い愉しみを見いだし、友人は皆無の高校生・清家椿太郎。
ある日、姉の御鍬が十字架に磔となって死んだ。
彼女が遺した「この家には悪魔がいる」というメモの真意を探るべく、椿太郎は家族の身辺調査を始める。
明らかとなるのは数多の秘密。
父は誘拐事件に関わり、新聞で事故死と報道された母は存命中、自殺した兄は不可解な小説を書いていた。
そして、椿太郎が辿り着く残酷な真実とは。
第23回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)

 

 

RKOの個人的おススメ指数

 

謎の素晴らしさ: A(2作品読んだかのような内容の濃いミステリーでした)

文章構成: S(最後の畳み掛けには驚きました)

登場人物: S(ここまで振り切るとは・・・)

読みやすさ: A(ユニークな文体で個人的には好きですが、相性はあるかと・・・)

再読したい度: A(また次回作が気になる作家さんが増えましたね)

おススメ指数 A

好き嫌いがはっきり分かれると思います。主人公の性格・思考をどこまで許せるかですかね。

 

 

感想

 

主人公・清家椿太郎は人妻との不倫を繰り返す友達もいない高校生。ある日、姉の御鍬が十字架に磔にされた状態で発見されます。数年前には兄が自殺しており、家族は父・母・自分だけに・・・。姉が残したメモには「この家には悪魔がいる」と書かれていました。「これで三人になったね・・・」と母は呟きます。誰が悪魔なのか。椿太郎は父・母・兄・姉、家族4人の身辺調査を始めます。この家族に用意された結末とは?椿太郎の知らなかった家族の「残酷な事実」が次々と明らかになっていきます。

 

前述した通り、この作品は好き嫌いがはっきり分かれる作品でしょう。とにかく主人公の全てが腹立たしいのです。しかも女性にモテてしまいます。この主人公の言動や思考をどこまで許せるかで作品の評価が変わってくるでしょう。これまでもミステリーでは一癖も二癖もある「探偵」が登場してきました。ただ、これらのいわゆる「奇人・変人探偵」に嫌悪感は感じなかったのではないかと思います。例えば、島田荘司さんの『御手洗潔』は変わってはいますが、とても愛すべき人物に映ります。しかしながら、本作の主人公・椿太郎は嫌悪感しか生まれないような人物ですので、こういった人物を許容できそうであればお試しいただきたい作品です。

 

また、ユニークな文体や言い回しも本作を特徴づけている要因の一つですね。他の作品との差別化を意識しているのか、あまり読んだ事のない言い回し表現が多い印象でした。また、eスポーツや今の高校生が聴きそうなバンド(KEYTALKとか)などが作中のモチーフとして使われているんですが、メインストーリーとは一切絡まないのが面白いですね。ミステリーのロジックはしっかり構築されており読み応えもありますので、前述した要素が許容できれば楽しめるはずです。とにかく人を選ぶ作品です。

 

好みが分かれそうな作品の為、絶対おススメですとは言いづらいですが、個人的には面白いと感じた作品でした。もしご興味を持たれた方は是非とも本作をチェックしてみてください。

 

 

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