個人的こんな方におススメ♬
こんにちは、RKOです。本日は2019年12月刊行、ウォルター・モズリィ作「流れは、いつか海へと」をご紹介します。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作です。
作者のウォルター・モズリィさんは、1991年のデビュー長編「ブルードレスの女」でアメリカ私立探偵作家クラブ賞と英国推理作家協会賞をダブル受賞、その28年後に本作でアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞を受賞した事で再び脚光を浴びました。
(参考)ブルードレスの女/ウォルター・モズリィ
本作は、タイトルからはイメージできませんでしたが、まさに「ノンストップで駆け抜けるハードボイルド小説」でした。罪を着させられ刑事職を辞したアフリカ系アメリカ人の主人公が、刑事時代の人脈を生かして自信の名誉回復と人助けの為に奔走する一気読み作品です。
ズバリ、この作品は、
概要
身に覚えのない罪を着せられてニューヨーク市警を追われたジョー・オリヴァー。十数年後、私立探偵となった彼は、警察官を射殺した罪で死刑を宣告された黒人ジャーナリストの無実を証明してほしいと依頼される。時を同じくして、彼自身の冤罪について、真相を告白する手紙が届いた。ふたつの事件を調べはじめたオリヴァーは、奇矯な元凶悪犯メルカルトを相棒としてニューヨークの暗部へとわけいっていくが。心身ともに傷を負った彼は、正義をもって闘いつづける―。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
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RKOの個人的おススメ指数
謎の素晴らしさ: B(本作の魅力はミステリではなく、ハードボイルドさにあり?)
文章構成: A(え?そっち行くの??でもその結末も嫌いじゃない)
登場人物: C(面白い登場人物達だが如何せん多くて覚えられない・・・)
読みやすさ: A(独特の言い回しに苦戦するも先が気になる展開で一気読み)
再読したい度: A(続編が出れば読みたいと思えるハードボイルド小説でした)
おススメ指数 A
アメリカ系アメリカ人で元刑事の主人公と個性豊かな登場人物達が魅力的で楽しめました。ただ、好みはわかれそうです。
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感想
13年前に身に覚えのない罪を着せられて刑事の職を辞した主人公・ジョー・キング・オリヴァー。私立探偵をしながら生計を立てる彼の元に、一人の依頼人が訪れます。彼女の依頼は、「二人の警官を殺害した事で収監されているジャーナリストの無実を証明すること」でした。ほぼ同時期に、13年前に冤罪で逮捕される原因となった女性から一通の手紙が届きます。それは「あなたは嵌められた」という内容の手紙でした。この2つの事件について調べていく内に、ニューヨークに潜む闇に迫っていきます。果たして彼は無実の男を救い出し、自身の名誉を回復する事ができるのか?仲間達と共にニューヨークの闇に戦いを挑みます。
本作の魅力は、主人公のジョー・オリヴァーと周囲の登場人物達の人間らしさが感じられる点でしょう。オリヴァーはアフリカ系アメリカ人の元刑事ですが、非常に正義感の強く周囲への優しさが随所に感じられます。ただし、無類の女好き。これが原因で彼は事件に巻き込まれるわけですが・・・・。また、オリヴァーを支える人達は、刑事時代にオリヴァーの優しさに触れた事で、純粋に彼の助けになりたいと奔走します。特に元悪党で時計職人のメルカルトは非常に頼もしい存在です。まさに昨日の敵は今日の友で、型破りの方法で彼を支えます。ただ、登場人物が非常に多く、名前を覚えられないのは難点かもしれません。
また、アフリカ系アメリカ人のオリヴァーの視点を通して、現在のアメリカ社会(ニューヨーク)の闇が垣間見えます。彼の視線を通して未だに続く人種差別や理不尽さといったものがドライに表現されています。オリヴァーのミドルネームである「キング」はマーティン・ルーサー・キングから、オリヴァーの事件の被害者であるナタリ・マルコムは「マルコムX」からきている事がわかります。日本にいるとこういった問題は深く考えることはないかもしれないですが、本作を読んで改めて考えさせられました。
冤罪事件の名誉と、黒人ジャーナリストの無実を証明するために奔走するノンストップ・ハードボイルド小説である本作。私もジョー・オリヴァーを始めとする登場人物達の人柄に触れ、魅せられた一人です。もしご興味を持たれた方は是非とも本作をチェックしてみてください。