個人的こんな方におススメ♬
こんにちは、RKOです。本日はユーディト・W・タシュラー作、「国語教師」をご紹介します。本作は2014年度ドイツ推理作家協会賞を受賞した作品で、2019年に日本語訳版が集英社より刊行されました。
「国語教師」という一見地味なタイトルに不安感を覚えながらも、ドイツ推理作家協会賞というフレーズに惹かれ手に取った本作。純粋に「読んで良かった」というのが感想です。ミステリーというジャンルに縛られる事なく、読んでいる途中で恋愛小説なの?いや、ホラーなの?と様相が変わっていく不思議な物語でした。
ズバリ、この作品は、
概要
十六年ぶりに偶然再会した、元恋人同士の男女。ふたりはかつてのように物語を創作して披露し合う。作家のクサヴァーは、自らの祖父をモデルにした一代記を語った。国語教師のマティルダは、若い男を軟禁する女の話を語った。しかしこの戯れこそが、あの暗い過去の事件へふたりを誘ってゆく…。物語に魅了された彼らの人生を問う、ドイツ推理作家協会賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
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RKOの個人的おススメ指数
謎の素晴らしさ: B(ミステリーを期待しすぎると・・・)
文章構成: S(非常に独特の構成で、終着点が最後まで読めませんでした)
登場人物: B(読者を皆敵にまわすクサヴァーの魅力はある意味スゴイ)
読みやすさ: S(二人のメールのやりとりが多く、読みやすいです)
再読したい度: A(2回目は違った雰囲気で読めそう)
不思議な読後感を感じられる本作。
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感想
16年ぶりに偶然再会することになった小説家のクサヴァーと国語教師のマティルダという元恋人同士のふたり。再会することになり、マティルダがこれまでどのように暮らしてきたか知りたいクサヴァーはメールで積極的にアプローチする一方で、マティルダからは素っ気ない返事が。ふたりの間には何があったのか。やがて、再会したふたりは以前のようにお互いの創作話を語り合うことになります。少しずつ明らかになっていく忌まわしい過去。彼らの物語の行き着く先はどこにあるのか。読み進める内に、物語の全体像が少しずつ明らかになっていきます。
本作の特徴は独特の構成にあります。作中、「再開までの二人のメールのやりとり」が占める割合が非常に多く、読者は彼らの拙いメールでのコミュニケーションから全体像を掴んでいくことになります。また、メールでのやりとりの間に「再開時の会話」や「彼らが創作した架空の物語」がばらばらの時系列で挿入されており、これが実際の話なのか、創作の話なのかが理解しづらいように設計されています。構成の技法により、徐々に物語の様相がわかるように仕掛けられているところが素晴らしいと感じました。
また、男女の恋愛物語としても非常にうまく描かれているように感じました。二人の心理描写が深く掘り下げられており、それぞれの相手を想う心情がよく感じられるようになっております。16年ぶりに再会した彼らが創作話を通じてもう一度心を通わせていこうとする姿には胸を打たれます。
果たして彼らの物語の行き着く先はどこにあるのか?クサヴァーとマティルダという二人の男女の物語は思いがけない終着点に辿り着くことになります。もしご興味を持たれましたら本作をチェックしてみてはいかがでしょうか。