『蟻の棲み家/望月諒子』:現代社会の格差という切実なテーマを描いたサスペンス小説

f:id:rko-3rdgeneration:20190515220101j:plain

個人的こんな方におススメ♬

こんにちは、RKOです。本日は2018年刊行、望月諒子作「蟻の棲み家」をご紹介します。本作は、望月さんのデビュー作「神の手」から続く「木部美智子シリーズ」の新作です。シリーズ物ですが全ての作品が独立しておりますので、本作からでも充分に楽しめます

木部美智子シリーズ第1作・神の手

本作は、雑誌記者・木部美智子の目を通して、連続殺人事件とそれに付随した誘拐事件、そしてその裏にある貧困・児童虐待といった現代社会の闇を赤裸々に描いた作品です。しっかりと練られたストーリーと圧倒的な描写力で非常に濃厚な作品であると共に、自分の知らないもう一つの世界について深く考えさせられる作品でした。一方で、ミステリーとしても成立させており、ボリューム感のある内容ながらも、しっかりと最後まで飽きさせない展開は流石だなと感じました。

ズバリ、この作品は、

『現代社会の闇を描いた社会派サスペンスが好きな』人向けです。

 

概要

二人の女が中野区内の別の場所で、それぞれ銃で撃たれ死亡しているのが発見された。どちらも身体を売り、育児を半ば放棄した、シングルマザーだった。マスコミが被害者への同情と美談を殊更に言い立てる中、フリーの記者・木部美智子は、蒲田の工場で起きた地味なクレーム事件を追い続けていたが…。現代社会の光の当たらない部分を淡々とした筆致で深く描き出した、骨太なノワール犯罪小説。(「BOOK」データベースより)

 

スポンサーリンク

 

RKOの個人的おススメ指数

謎の素晴らしさ: A(ラストは圧巻の出来)

文章構成: S(前半の前振りが終盤で回収されます)

登場人物: A(飾らない女性記者の主人公に惹かれます)

読みやすさ: A(非常に緻密な描写でリアリティが凄い)

再読したい度: S(この読後感を味わってほしい)

おススメ指数 A
貧困格差の闇を遠慮なく赤裸々に描いています。

 

スポンサーリンク

 

感想

2人の女性が銃で殺害されるという連続殺人事件が発生します。一方、食品工場に一通の封筒が届きます。それは、「3人目の犠牲を出したくなければ2000万円を用意しろ」という内容でした。殺害された女性達や3人目に誘拐された女性は、誘拐事件に巻き込まれるような裕福な女性ではなく、むしろ生活に困っている女性達でした。雑誌記者・木部美智子は独自の視点からこの不可思議な事件を追う事になります。

本作は、日本の貧困問題、生活格差について何もオブラートに包むことなく赤裸々に描いております。これが、雑誌記者という語り手によって社会の闇が一層際立っているように感じます。生まれた境遇という運命に逆らうことができない女性達という、当事者でなければ目を逸らしてしまう部分を非常に緻密に描いており、望月さんの強いメッセージを感じました。

作中では、父親が誰かわからず育てられた「末男」という青年が登場します。彼の母親は育児放棄をしており、年が離れた妹の面倒を見ながら、どうか彼女だけは普通に就職して普通の暮らしをしてほしいと行動に起こしていきます。末男という存在を通じて、つらい境遇から抜け出すことの難しさを我々は嫌という程思い知らされます。

社会派サスペンスを書くためにはここまでの筆力が必要なのかと感じられる力作です。正直読むのは大変ですし疲労感も感じられるかと思いますが、非常に重厚感のある大作となっておりますので、高クオリティの社会派サスペンスが読みたい方は是非とも本作をチェックされてはいかがでしょうか。

 

スポンサーリンク
最新情報をお届けします