『綾峰音楽堂殺人事件/藤谷治』:真相を事件が起きた背景から辿る異色ミステリー

個人的こんな方におススメ♬

 

こんにちは、RKOです。本日は2019年6月刊行、藤谷治作「綾峰音楽堂殺人事件」をご紹介します。

 

一つだけ言いたいことがあります。タイトルが良くないです。(笑) 「綾峰音楽堂殺人事件」なんてタイトル、音楽ミステリーを期待するじゃないですか! 本作の魅力はミステリーとしての要素ではないです。事件の背景にある、古典音楽という「文化」を維持する事の難しさ・その文化を維持するための葛藤を、演奏家や行政担当者など様々な立場から描いた点が評価できる作品でした。

 

ズバリ、この作品は、

『音楽という「文化」の維持をテーマとした小説に興味がある』人向けです。

 

概要

 

音楽評論家として著名な英文学教授・討木穣太郎は、綾峰県立音楽堂を活動拠点とする綾峰フィルの顧問としてたびたび綾峰県を訪れていたが、ある日この音楽堂の取り壊しと綾峰フィルの解散を告げられる。釈然としない思いのまま迎えた音楽堂の最終公演の日、音楽堂で殺人事件が起きた。殺されたのは、音楽堂の取り壊しを引導した男だった―。(「BOOK」データベースより)

 

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RKOの個人的おススメ指数

 

謎の素晴らしさ: C(犯人なんて誰だっていいんだ!(笑))

文章構成: A(事件までの過程から真相に迫るという手法は気に入りました)

登場人物: C(登場人物の立ち位置がイマイチ掴めなかったかな・・・)

読みやすさ: B(音楽の「文化」としての側面について考えさせられました)

再読したい度: B(音楽ミステリーではないので過度の期待は禁物です)

おススメ指数 B

ミステリーとしては評価が難しい作品ですが、「音楽」の存在意義に関して考えさせられました。

 

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感想

 

ある事情」によって解散する事になった綾峰フィルハーモニー管弦楽団。同様に取り壊しが決定した「綾峰音楽堂」での最終演奏会終了と同時に、楽屋で一人の男が殺害されているのが発見されます。この男は、綾峰フィルが解散する事になった「きっかけ」を作った男でした。どうしてこの男は殺される事になったのか。綾峰フィル顧問の英文学教授・討木穣太郎が、綾峰フィル終焉までの様々な出来事を振り返りながら、事件の真相に迫ります。

 

前述した通り、本作は殺人事件が主題ではありません。作中の大部分で、事件が起きるまでの背景としてクラシック音楽や地方のオーケストラの厳しい現状について語られます。演奏会を行えば行うほど赤字が発生してしまうオーケストラ、それを市民の税金で支える行政。ある一人の男の存在によって、「赤字負債の音楽堂や綾峰フィルはいらない」という世論の不満が噴出します。作中、討木教授の「オーケストラは図書館のようなもので、存在価値はあると認められているからこそ、赤字であっても継承していく必要がある」という発言が印象的でした。音楽を「文化」として捉えた側面と、「商業コンテンツ」として捉えた側面の双方からの意見の主張は非常にリアルに感じられると共に考えさせられました。

 

また、本作は「フジツボ・ムサオ」というノンフィクション作家が討木教授の証言をもとに文章化した「ノンフィクション小説」という形式をとっています。ほとんどが事件が起きるまでの出来事と討木教授の心境に割かれており、綾峰という地方都市が抱える闇であったり、「赤字経営で税金を無駄にしている」という世論の恐ろしさであったり、全てがリアルに感じられる構成になっています。クラシック音楽やオーケストラの現状についての登場人物達の説明を通して、「作者の強いメッセージが伝わってきました。

 

「綾峰音楽堂殺人事件」というタイトルですが、真相を事件が起きた背景から辿る異色作品でした。一人の男が殺される事になった背景には、綾峰という地方都市の闇が潜んでいました。もしご興味を持たれましたら本作をチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

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