『毒よりもなお/森晶麿』:殺人犯の空疎で悲しい内面を描いたサイコサスペンス

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個人的こんな方におススメ♬

こんにちは、RKOです。本日は2019年3月刊行、森晶麿作「毒よりもなお」をご紹介します。森晶麿さんは『黒猫の遊歩あるいは美学講義』で第1回アガサ・クリスティー賞を受賞された作家さんです。

本作は、「自殺サイトを利用した連続殺人」という現実に起こった事件をテーマとし、時代や場所などの設定を全て変えたフィクション小説です。しかしながら、連続殺人犯の過去や内面を非常にリアルに描いており、深く考えさせられる内容となっております。

ズバリ、この作品は、

『考えさせられるサイコサスペンスを読みたい』人向けです。

 

概要

都内でカウンセラーとして働く美谷千尋は、自殺願望のある高校生、今道奈央から“首絞めヒロの芝居小屋”という自殺サイトの存在を知らされる。そこに犯罪の匂いを感じた千尋は、サイトの管理人が8年前に故郷の山口県で知り合った「ヒロアキ」ではないかと疑いを抱く。千尋によって徐々に明らかにされていくヒロアキの恐ろしくも哀しい過去。ヒロアキはなぜ連続殺人犯になってしまったのか?千尋とヒロアキの間に流れる8年間の物語とは―?(「BOOK」データベースより)

 

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RKOの個人的おススメ指数

謎の素晴らしさ: B(最後まで予想がつきませんでした)

文章構成: A(作品の「毒」が感じられました)

登場人物: B(登場人物達の過去が切ない・・・)

読みやすさ: S(とても綺麗な文章でストレスなく読めました)

再読したい度: B(題材が題材だけあって読み返すのは大変そう)

おススメ指数 B
殺人犯の内面を描いた色々と闇を感じられる作品でした。

 

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感想

はじめから人生を間違えた者の物語。

でも、あなたの物語かもしれない。(書籍-帯より)

本作は、カウンセラーの美谷千尋が、“首絞めヒロの芝居小屋”という自殺サイトの管理人が自分が昔から知る「ヒロアキ」ではないかと疑いを抱きます。千尋は過去の経験からヒロアキの仕業であると信じ、阻止するために行動を起こします。読み進めていくうちに、どうしてヒロアキは他人の首を絞めるようになったのか、どうして千尋がそこまでヒロアキに固執するのかが次第に明らかとなっていきます。

作中で千尋とヒロアキが議論するシーンが何度かあるんですが、ヒロアキの心境を読み取ることは正直難しいです。それでもヒロアキという存在に魅力を感じてしまいます。善と悪、理性と狂気の境界線はどこなのか、対話を重ねるうちに自分にも本作でいう「毒」というものが感じられたのかもしれません。帯にも「あなたの物語になるかもしれない」とありましたが、それだけ境界線は曖昧であるということでしょう。

また、本作は「フジファブリック」の楽曲を大きくフィーチャーしております。これは、作者の森さんが執筆中に「若者のすべて」が頭の中に流れたからだそうで、楽曲の歌詞が構想にマッチしたということでしょう。個人的にフジファブリックは大好きなバンドなので、読書中は私の頭の中でも流れておりました。ギターボーカルの志村さんが亡くなってしまいましたが、ギターの山内さんがボーカルを引き継いで活動を継続されています。

fujifabric.com

連続殺人犯の悲しい内面をリアルに描いた本作。「エピローグ」と「作者あとがき」を読了後、私自身も色々考えさせられました。私にも「毒」がまわったのかもしれません。果たしてカウンセラーの千尋はヒロアキを止めることができるのか。驚愕の結末が待ち受けておりますので、興味を持たれた方は是非ともチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

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