『ファミリーランド/澤村伊智』:センシング社会の怖さを描いた近未来SF作品

個人的こんな方におススメ♬

 

こんにちは、RKOです。本日は、2019年7月刊行、澤村伊智作「ファミリーランド」をご紹介します。澤村伊智さんは、2015年『ぼぎわんが、来る』で第22回日本ホラー小説大賞大賞を受賞したホラー作家さんです。

 

本作は、デジタル化がさらに進んだ近未来を舞台とし、スマート社会の負の側面をホラーテイストで表現した短編集です。デジタル社会の到来は本当の意味で人を幸せにしているのか。非常に考えさせる内容と共に、怖さを感じさせる作品でした。

 

ズバリ、この作品は、

『近未来を舞台とした怖いSF作品を読みたい』人向けです。

 

概要

 

ホラー小説大賞&日本推理作家協会賞受賞作家が、令和元年にお届けする最も恐いSF小説集。スマートデバイスで嫁を監視する姑、高級ブランド化する金髪碧眼のデザイナーズチャイルドと育児ハザード、次世代型婚活サイトとビジネス婚に待ち受ける陥穽、自律型看護ロボットを溺愛する娘と母親の対決…。ホラーとミステリ、両ジャンルの若き旗手たる著者が克明に描く、明るい未来を待ち望むすべての家族に捧げる、素晴らしき悪夢。(「BOOK」データベースより)

 

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RKOの個人的おススメ指数

 

謎の素晴らしさ: 

文章構成: A(近未来ながらもありそうで怖いという絶妙のバランス)

登場人物: B(技術の進歩は人を幸せにするのか、考えさせられました)

読みやすさ: A(ドローンやスマートセンサーからここまで発想できるとは)

再読したい度: A(6編とも違う怖さがあって飽きません)

 

おススメ指数 A

ゾクゾクできる怖さを堪能できる作品でした。

 

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感想

 

「いい時代になりました」

 

IoTセンサーを搭載したスマートデバイス、ドローンの普及といったデジタル社会がさらに進んだ近未来社会を舞台に、これらに翻弄される人々を描いた作品です。ただスマート社会に警鐘を鳴らすだけでなく、澤村さんらしくゾクゾクできる不気味さを加えることで、読者を飽きさせない短編集となっております。

 

本作では、6つの要素をテーマとした短編が収録されております。デジタル葬式やスマートデバイスに囲まれた家など、身近なテーマにSF要素を加えることで独特の怖さを演出しています。特に、娘がドローン型のロボットに心を許してしまうお話は怖かったですね。母の視点から見ると、娘がドローンに洗脳されているのではないかと感じますし、娘から見れば家族よりも気を許せる存在として信頼していくわけですので、案外単純な話ではなく非常に複雑な問題だなと思いました。

 

冒頭にあるように、本当に科学技術の進歩は「いい時代」の実現に寄与するのか? 技術の発展には必ず負の側面が存在します。車社会や発電技術に関しても同様の議論がなされてきたかと思います。また、本作ではビックリするような怖さではなく、ジワジワ来る怖さを楽しむことができます。なお、差別や偏見に関する内容が多く含まれており、中には嫌悪感を抱く方もいらっしゃるかもしれません。その点ご注意ください。

 

スマート社会が行き着く先はこんな未来なのか? デジタル化が進んだ近未来を舞台としたSF小説です。読む方によって感じ方が変わる作品かもしれません。もしご興味を持たれましたら本作をチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

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