『風神の手/道尾秀介』:一つの風が様々な人々の運命を変えていく連作中編ミステリー

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個人的こんな方におススメ♬

こんにちは、RKOです。本日は2018年刊行、直木賞作家・道尾秀介作「風神の手」をご紹介します。この本を手に取ったきっかけは、タイトルと表紙の美しさに惹かれた事ですね。表紙は伊藤花りんさんというサンドアーティストの方が手がけたそうで、非常に幻想的な雰囲気が演出されており、作品の期待感が一層高まります。

内容は、3つの中編(「心中花」、「口笛鳥」、「無常風」)とエピローグ「待宵月」から成るミステリー仕立ての中編短編集です。これら4つの物語は全て同じ地域で発生した出来事であり、読み進めるうちに少しずつパズルのピースがはまっていき、最後にはすべての出来事がつながります。

一つの行動が様々な連鎖を呼び、様々な人々に影響を及ぼしていく様は、現実の世界でも起こりえることであり、人の出会いの偶然性・必然性についても大変考えさせられる作品でした。

ズバリ、この作品は、

『人と人との繋がりを小説を読んで感じたい』人向けです。

 

概要

彼/彼女らの人生は重なり、つながる。隠された“因果律”の鍵を握るのは、一体誰なのか―章を追うごとに出来事の“意味”が反転しながら結ばれていく。数十年にわたる歳月をミステリーに結晶化した長編小説。(「BOOK」データベースより)

 

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RKOの個人的おススメ指数

謎の素晴らしさ: S(終盤の伏線回収はお見事でした)

文章構成: S(全ての出来事に意味がある)

登場人物: A(登場人物達それぞれの感情の変化が伝わります)

読みやすさ: A(3編それぞれ雰囲気もガラッと変わるところが上手いです)

再読したい度: S(ボリュームはありますがこの読後感は個人的に好き)

おススメ指数 S
結末へ向かって伏線が繋がっていく感覚が心地よく、大変美しい作品でした。

 

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感想

本作は、一つの地域で起きた4つの出来事を、それぞれ異なる主人公を中心として描かれています。これらの出来事が一見別々の出来事かのように思われますが、少しずつ謎が解明されることによって一つの大きな物語へと形を変えていきます。

第一章は、遺影専門の写真館「鏡影館」を訪れた死期の近い母・奈津実が、自身の青春時代の淡い恋を娘・歩美に打ち明ける「心中花」というお話。

第二章は、「でっかち」と「まめ」という二人の少年の友情と冒険を描いた「口笛鳥」というお話。

第三章は、看護師になった歩美が、「鏡影館」で偶然出会った「ノカタ」という病院患者と出会うことから数十年前の出来事の真相を探るという「無常風」というお話。

これらの一見関係ない話が、作中至るところに張り巡らされた伏線によって、全てのピースがはまっていくのです。特に終盤までほとんど見えなかった真相が明らかになっていく様は素晴らしいです。ミステリー要素はあるものの一つの物語として秀逸な作品であるように感じました。

最後のエピローグでは、登場人物達のこれまでを追ってきた分、自分自身も物語の登場人物のように思えてしまう何ともいえない不思議な感覚に陥りました。そして読み終わって初めて、タイトルの素晴らしさについても感じられるようになっています。

3つの中編とエピローグ、全てが非常に読み応えのある物語ですので、お時間に余裕のある際に、じっくり時間をかけて読む方が良いかなと感じました。道尾秀介さんの新たな代表作ではないかと個人的に感じる本作、是非ともチェックされてはいかがでしょうか。

 

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