『悲願花/下村敦史』:最後まで結末が読めないヒューマンドラマ

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個人的こんな方におススメ♬

こんにちは、RKOです。本日は2018年12月刊行、下村敦史作「悲願花」をご紹介します。下村敦史さんは「闇に香る嘘」で江戸川乱歩賞を受賞・デビューされた作家さんです。こちらの作品では、盲目の主人公という”あえて視覚を制限した表現描写”を行うことで、深みのあるミステリー作品として仕上がっておりました。

 

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本作では、両親が起こした無理心中で唯一生き残った女性・幸子と、子供たちを乗せた車で無理心中を起こし生き残ってしまったシングルマザー・雪絵の出会いを描いています。

別々の出来事ではありますが、一家心中を起こされた幸子を<被害者>、車で無理心中を起こした雪絵を<加害者>として表現し、それぞれの想いが交錯していく様を見事に表現した良作でした。

ズバリ、この作品は、

『最後まで結末が読めないヒューマンドラマが好きな』人向けです。

 

概要

両親が起こした火事で、ひとり生き残った幸子。子供たちを乗せた車で海に飛び込み、生き残ってしまったシングルマザーの雪絵。宿命的な出会いによって、二人の女性の人生が動き出す。“加害者”と“被害者”の思いが交錯した時、衝撃の真実が明らかになる!!慟哭のミステリー。(「BOOK」データベースより)

 

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RKOの個人的おススメ指数

謎の素晴らしさ: S(流石、下村敦史さんというお話でした)

文章構成: A(プロットを練らずに書き始めたらしいけど本当?(笑))

登場人物: B(事件当事者ってこういう気持ちになるのかな)

読みやすさ: S(重いテーマですがサクッと読めます)

再読したい度: A(プロローグだけで泣きそうになります)

おススメ指数 A
プロットを練らずに書き始めたらしいですが、安定の下村作品でした。

 

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感想

一家心中でなくなった両親・妹・弟の墓参りに来た幸子は、彼岸花が咲く墓地で、無理心中を起こしたシングルマザーの雪絵と偶然出会います。無理心中を起こした<加害者>である雪絵を自分の”母”と重ね合わせた幸子は、嘘をつくことで雪絵に近づき、<被害者>として無理心中を起こした彼女の想いを知ろうとします。

まず、プロローグを読んだだけで泣きそうになる作品です。全編を通して一家心中の生き残りである幸子の視点から描かれており、幸子の事件に対するトラウマ・これまで生きてきた中での苦悩が彼女の会話からにじみ出ています。

作品中で、心中と無理心中の違いが説明されておりました。互いに死を同意した者同士が命を絶つのが心中で、誰か道連れにするのが無理心中だそうです。

下村さんによると、本作はこれまでの作品とは違い、取材もそこまで深く行わず、プロットも練らないまま書き始めたそうです。それだけに読み進める我々も、終盤まで終着点が全く読めない為にどんどん惹き込まれていきます。

私は無理心中を経験していないので、登場人物達の心境が理解できませんが、もし自分が同じ立場に置かれたときにどう感じるのか非常に考えさせられる作品でした。社会問題を中心に重いテーマを積極的に描いている下村敦史さんの作品ですので、彼女たちがどこへ進むのか、どうしてタイトルが彼岸花ではなく悲願花なのか、是非とも結末を読んでいただき感じていただければと思います。

 

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