
はじめに
こんにちは、RKOです。今年も各出版社さん主催・ミステリランキング発表時期が近づいてまいりました。今年度も多くのミステリー作品が発表され、個人的には満足の1年でした。
そこで、今回は2020年版・本格ミステリベスト10にランキングされそうな作品を国内小説と海外小説それぞれ5作ずつご紹介します。
あくまで、私がこれまで読んだ中で面白いと感じた小説ですので予めご了承ください。(白井智之さんの「そして誰も死ななかった」とか阿津川辰海さんの「紅蓮館の殺人」とかまだ読めてないので・・・)
2020年版:本格ミステリ ベスト10
本格ミステリ・ベスト10は探偵小説研究会編著の推理小説のランキング本で、原書房より毎年12月に発表されています。他のミステリーランキングでは非ミステリー作品もランキングされることもありますが、本格ミステリベスト10では、基本的に本格ミステリーとしての完成度が評価されるランキングです。
ランキングの集計方法は、研究会が本格ミステリに関する有識者と考える人々に投票を依頼し、1位から5位を決めてもらう形式ですね。
なお、選考対象は、2018年11月から2019年10月までに刊行された作品です。
個人的には比較的海外作品を読むことが多かった今年度。ピータースワンソンや、ピエール・ルメートルなどランクイン常連作家の作品が多く発表されましたね。
その中でも個人的に面白かった作品を国内小説5作、海外小説5作をご紹介致します。
(19/12/7 追記) すいません、特に海外編は大外しでしたね (華文系はほぼノーチェックでした)。2021年度は海外の本格ミステリーもどんどん読み進めていきたいと思います。ランクインしていない作品も個人的には面白いなと感じましたので是非ともチェックしてみてください。
(参考)本格ミステリベスト10のご紹介
国内編 1作目 『魔眼の匣の殺人/今村昌弘』
デビュー作の「屍人荘の殺人」の続編で、周囲の期待が高まる中発刊された正統派ミステリー。「予言」というSF設定を本格ミステリに見事に融合させた作品でした。トリックもしっかりと練られており、クローズドサークル好きとしても満足できる内容ではないでしょうか。
シリーズ物としても続きが気になる作品で、早くも次回作が楽しみな作品です。第1作の「屍人荘の殺人」を未読の方はこちらからチェックしてみてください。
(参考)第1作「屍人荘の殺人」
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国内編 2作目 『むかしむかしあるところに死体がありました。/青柳碧人』
日本昔ばなしを題材とした本格ミステリー5編を収録した短編集です。誰もが知っている昔ばなしがミステリーとして展開されていく為、まるで演劇の舞台を裏側から見ているような不思議な感覚に陥ります。
特に「桃太郎」を題材とした「絶景の鬼ヶ島」では、鬼を登場人物して鬼ヶ島をクローズドサークルとしたお話。鬼視点で進行する物語ですので、桃太郎と手下達の残虐さが鬼視点で感じられるという新鮮なストーリーでした。
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国内編 3作目 『刀と傘/伊吹亜門』
明治期の京都を舞台とした本格ミステリーが展開される本作。幕末そして明治初期に生きた二人の武士(江藤新平・鹿野師光)が、様々な事件を解明していく連作短編集です。本作では江藤新平と若手藩士・鹿野師光の出会いから徐々に関係性が変化していく様を非常にうまく表現した時代小説でもあり、歴史好きとしても楽しめる小説です。
特に、「第十二回ミステリーズ!新人賞」を受賞した『監獄舎の殺人』が非常に完成度の高い作品でした。処刑直前に武士が毒殺された理由を推理するという「ワイダニット」をテーマにしたお話で、この時代ならではのミステリーが展開されます。第19回本格ミステリ大賞も受賞しており、今後の作品にも期待したい作家さんですね。
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国内編 4作目 『本と鍵の季節/米澤穂信』
結構前に発刊された作品のイメージがありましたが、昨年の年末なので選考対象ですね。学校の図書委員二人を主人公とした青春ミステリーですが、そこはただの青春ミステリーでは終わりません。本に関係する日常の謎解きを通じて、二人の関係性が微妙に変化していく様を見事に表現されている作品です。
米澤穂信さんは、2019年9月に話題作「Iの悲劇」も発表されておりますので、今年度はランキングにも複数作品ランクインしてくるのではないでしょうか。
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国内編 5作目 『或るエジプト十字架の謎/柄刀一』
エラリー・クイーンの『国名シリーズ』を題材とした連作短編ミステリーです。あくまで題材とした別作品ですので、国名シリーズを未読の方でも楽しめますし、クイーン好きはニヤッとしてしまうアイディアのトリックが満載です。
「ローマ帽子の秘密」や「フランス白粉の秘密」など、各話タイトルに入っているキーアイテムがトリックに大いに関係していきますので、このキーアイテムから事件のトリックを推理していく事も可能です。
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海外編 1作目『死者の国/ジャン=クリストフ グランジェ』
ジャン=クリストフ・グランジェ/高野 優 早川書房 2019年06月06日
「クリムゾンリバー」の作者が贈る最新作。本作品はハヤカワポケットミステリ史上最長の二段組み760ページという、それだけで戦慄の作品でした。本作ではフランシスコ・デ・ゴヤが描いた作品の存在がクローズアップされており、絵画ミステリーとしての側面も楽しめます。
登場人物の内面性も深く掘り下げられており、恐ろしいボリュームながらも最後は寂しさを感じさせる作品でした。
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海外編 2作目 『償いの雪が降る/アレン・エスケンス』
アレン・エスケンス/務台夏子 東京創元社 2018年12月20日
個人的には今年度で一番好きだった海外ミステリーです。ある男子学生が大学の課題で「年長者の伝記」を書くために30年前の少女殺人事件の犯人にインタビューすることになり、彼の過去を振り返る中でこの事件の真相を探るミステリーです。
シンプルなストーリーながらも、事件を通じて成長していく主人公の姿が非常にうまく描かれているなという印象を受けました。ただの大学生である事から、様々な制約の中事件を調査していくというスタイルにも興味を持ちました。
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海外編 3作目 『カルカッタの殺人/アビール・ムカジー』
アビール・ムカジー/田村 義進 早川書房 2019年07月04日
第一次世界大戦後のカルカッタを舞台とした歴史ミステリー。イギリス人警部のサムとインド人刑事のバレスビーという人種や境遇が異なる2人の刑事が協力しながら殺人事件を追っていきます。インドの若手刑事の活躍から当時の時代背景が把握できると共に、非常に考えさせられるミステリーでした。
時代小説としても大変興味深く、当時のインドの混沌とした情勢が事細かに描かれています。インド系移民2世のイギリス人である著者が徹底的に時代背景を調査したという事で、大変勉強にもなりました。
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海外編 4作目 『イヴリン嬢は七回殺される/スチュアート・タートン』
スチュアート・タートン/三角 和代 文藝春秋 2019年08月09日
ミステリー好きであればどこかで聞いたこともある題名のミステリー。とにかくミステリーでは7回死ぬことがトレンドのようです。「タイムループ×人格転移」という設定を活かし、まるでゲームのような展開で進行していきます。
ちょっと途中は複雑な展開になってしまい、じっくり読まないとついていけない事もありますが、終盤にはタイムループ物でしか味わえない醍醐味もあり、根気強く読んでいくと最後には楽しめるミステリーとなっています。
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海外編 5作目 『終焉の日/ビクトル・デル・アルボル』
ビクトル・デル・アルボル/宮崎 真紀 東京創元社 2019年03月20日
ヨーロッパミステリ大賞を受賞したスペインミステリーである本作。スペイン内戦後の1941年と民政移行期である1980年という二つの時代を交互に見せながら、時代に翻弄され十字架を背負わされた人々の人生を切実に描いた大作で、内戦の凄惨さも描かれた重厚な作品です。
原題は「La tristeza del samurai(サムライの悲しみ)」で、日本刀や武士の美徳についても作中にエッセンスとして用いられています。スペイン内戦とサムライの悲しみがどう絡んでいくのかは本作を読んでお楽しみください。
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さいごに
どの作品も作家さんの色が感じられて、読後の満足感が得られた作品でした。毎年この時期になると、「この作品入るかな?」とランキングを想像するのも楽しいですね。
一方、気になってまだ読めていない対象時期の作品も多いため、11月中に読んでおきたいと思います。「カササギ殺人事件」のアンソニー・ホロヴィッツ新作「メインテーマは殺人」なんか絶対ランクインすると思いますが、残念ながら未読です。
(参考)メインテーマは殺人:アンソニー・ホロヴィッツ
アンソニー・ホロヴィッツ/山田 蘭 東京創元社 2019年09月28日
良質のミステリーを読みたいという方にとって少しでも参考になれば幸いです。興味を持たれた作品がありましたら是非ともチェックしてみてください。
