『刀と傘/伊吹亜門』:明治期の京都を舞台とした良質ミステリー♬

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個人的こんな方におススメ♬

こんにちは、RKOです。本日は、2018年11月刊行、伊吹亜門作「刀と傘」をご紹介します。本作は、第19回本格ミステリ大賞小説部門受賞作です。

明治期の京都を舞台とした本格ミステリーが展開される本作。幕末そして明治初期に生きた二人の武士(江藤新平・鹿野師光)が、様々な事件を解明していく連作短編集です。

江藤新平といえば、「西郷隆盛らと共に征韓論を主張して岩倉具視らと対立した事がきっかけで政府を離れ、佐賀の乱を起こした人物」と個人的には記憶しておりましたが、初代司法卿として法の整備を粛々と進めた人物でもあるんですね。本作では江藤新平と若手藩士・鹿野師光の出会いから徐々に関係性が変化していく様を非常にうまく表現した時代小説でもあると感じました。

ズバリ、この作品は、

『明治期を舞台とした良質ミステリーを読みたい』人向けです。

 

概要

維新に揺れる明治の京。奇怪な謎に挑むのは、尾張出身の若き武士と初代司法卿江藤新平。死刑執行当日、なぜ囚人は毒殺されたのか?第12回ミステリーズ!新人賞受賞作「監獄舎の殺人」に連なる時代本格推理、堂々登場。(「BOOK」データベースより)

 

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RKOの個人的おススメ指数

謎の素晴らしさ: A(時代小説ならではの謎を楽しめます)

文章構成: S(二人の男の信念が感じられる良いラスト)

登場人物: S(彼らの維新に関する考えや方向性が良く理解できます)

読みやすさ: A(緻密な描写によって彼らの生きた世界がイメージできます)

再読したい度: S(他の作品も是非読みたいと思いました)

おススメ指数 S
時代小説としてもミステリーとしても堪能できました。

 

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感想

新政府と旧幕府の対立に揺れる幕末の京都で、若き尾張藩士・鹿野師光は、後に初代司法卿となり近代司法の礎を築く佐賀藩士・江藤新平と出会います。お互いの実力を認め合う二人ですが、殺人事件を通じて、彼らの考え方の違いがより鮮明になっていきます。時代は明治へと移り、彼らは時代の中心となっていきますが・・・。果たして異なる「正義」を掲げた二人はどういった結末を迎えるのか? 時代背景もしっかりと描かれており、時代小説としてもおススメしたい作品です。

本作は、5つの物語を収録した連作短編集ですが、幕末期・明治初期という時代設定をうまく活用した高クオリティのミステリーが並んでいます。特に、「第十二回ミステリーズ!新人賞」を受賞した『監獄舎の殺人』が非常に完成度の高い作品でした。処刑直前に武士が毒殺された理由を推理するという「ワイダニット」をテーマにしたお話で、「この時代ならではのミステリー」が展開されます。全体としても素晴らしい作品ですが、このお話だけでも一読の価値があるお話だと感じました。

第19回本格ミステリ大賞を受賞した本作。幕末・明治期という維新志士が生きた世界に惹きこまれます。ミステリーとしてだけでなく、時代小説としても秀逸な作品であると感じましたので、歴史好きで、且つ、ミステリー好きの方には是非とも本作をチェックしていただければと思います。

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