『煙とサクランボ/松尾由美』:幽霊の見方が変わる大人のSFミステリー

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個人的こんな方におススメ♬

こんにちは、RKOです。本日は2011年刊行、松尾由美作「煙とサクランボ」をご紹介します。SF作家としても著名な松尾由美さん。以前も「ニャン氏の事件簿」という実業家兼童話作家の猫・ニャン氏を探偵役とした作品をご紹介しました。非常に魅力的で癒される作品でしたのでこちらもおススメです。

 

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本作は、「幽霊」が探偵役として登場します。この幽霊というのが、故人と親交のあった人には見えないものの、その故人に馴染みのない人には普通の一般人として見えるという、他の作品で描かれる幽霊とは異なる不思議な作品。もしかすると、普段通勤・通学中に見かけるあの人って幽霊かもしれない、この”特殊な幽霊”という設定をうまく活用した素敵なお話でした。

ズバリ、この作品は、

『SF設定を活用した余韻の残る物語を読みたい』人向けです。

 

概要

兼業漫画家の晴奈のなじみのバーは、ビルの地下にある小さな店。常連の自称早期退職者・炭津は、晴奈の話に的確で親身な助言をしてくれる素敵な紳士だ。店主の柳井の話では、名探偵でもあるらしい。そんな彼が実は幽霊だということは、柳井だけが知る秘密だ。晴奈は、幼い頃に起きたある事件を炭津に語り始めるのだが…。温かく切ない余韻を残す大人のミステリー。(「BOOK」データベースより)

 

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RKOの個人的おススメ指数

謎の素晴らしさ: B(王道のミステリーではなく、物語を楽しむ作品です)

文章構成: A(ラストは非常に素敵な展開でした)

登場人物: B(幽霊が探偵役という不思議な設定の作品)

読みやすさ: B(説明がまわりくどい部分は多少あったかなとは思いました)

再読したい度: A(幽霊の見方が変わるお話です)

おススメ指数 B
余韻が残る素敵なお話でした。

 

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感想

本作は、56歳の時に交通事故で死亡した男性を主人公とした物語です。自らを炭津と呼ぶこの男性は14年間幽霊として生活しています。炭津と生前親交のあった人には見えませんが、親交のなかったほとんどの人には炭津は普通の生きた人間として見えます。幽霊を見分けることができるバーテンダーの柳井、会社員をしながら漫画を描く立石春奈と知り合うことで、少しずつ炭津の物語が再度動き始めます。

ご飯を食べられないなど制約があるものの、見た目は普通の人間でありアルバイトも行う炭津。生前親交のなかった人には幽霊には見えないため、人間ともコミュニケーションを取れるというところが本作の面白いところです。炭津の幽霊になってからの生活を振り返る形で淡々と進みますが、上品な大人のSFミステリーとして楽しむことができます。

もちろん幽霊モノといってもホラー作品ではありません。王道ミステリーでもなく、どちらかというと謎がちりばめられたファンタジー作品といった方が良いかもしれません。非常に上品で素敵な雰囲気に彩られた作品です。ゆったりと楽しみたい方にはおススメできる作品ですので、ご興味を持たれた方は是非ともチェックされてはいかがでしょうか。

 

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