『終焉の日/ビクトル・デル・アルボル』:ヨーロッパミステリ大賞受賞のスペインミステリー♬

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個人的こんな方におススメ♬

こんにちは、RKOです。本日は本ブログ初のスペインミステリーです。ビクトル・デル・アルボル作「終焉の日」をご紹介します。原題は「La tristeza del samurai(サムライの悲しみ)」。ヨーロッパミステリ大賞を受賞した作品です。

スペイン内戦後の1941年と民政移行期である1980年という二つの時代を交互に見せながら、時代に翻弄され十字架を背負わされた人々の人生を切実に描いた大作でした。文庫本ながらも500ページを超えるボリュームの作品中では、登場人物達の内面を丁寧に表現しており、重厚感のある作品に仕上がっております。

ズバリ、この作品は、

『登場人物の内面を丁寧に描いた長編小説を読みたい』人向けです。

 

概要

1980年のバルセロナ。弁護士のマリアは数年前に、悪徳警官セサルが情報屋を制裁した殺人未遂事件で、セサルを刑務所送りにしたことで名声を得た。だが今、事件が陰謀によって仕組まれていたと判明する。マリアは再調査をはじめ、自らの血の桎梏と体制側の恐るべき策略を知る。殺人、偽証、復讐に運命を狂わされた人間たちの悲哀が胸を打つ、欧州読書界で絶賛された大河ミステリ。(「BOOK」データベースより)

 

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RKOの個人的おススメ指数

謎の素晴らしさ: A(登場人物達が複雑に絡み合う大河ドラマのよう)

文章構成: A(最後はそう来ましたか)

登場人物: A(登場人物達の背負う十字架が巧みに表現されています)

読みやすさ: C(重厚で読み応えのある作品ですが残酷描写も多く読み手を選びます)

再読したい度: B(作者の他作品にも興味が湧いています)

おススメ指数 A
スペイン内戦の凄惨さを鋭く描いた重厚作品でした。

 

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感想

本作は、スペイン内戦後フランコ独裁政権となった1941年と、フランコ没後の民主化移行期である1981年という2つの激動期を舞台にした作品です。2つの時代に振り回され、宿命を背負った人々の苦しみ、そして悲しみの連鎖を、登場人物達の個性を丁寧に描く事で表現しています。

私自身特にスペイン史に詳しいわけではないですが、非常に丁寧に説明されているので時代背景も理解できましたし、時代に翻弄される人々の苦しみ・やりきれなさが伝わってきました。この2つの時代の登場人物達の運命が次第に明らかになっていきます。

また、本作では独裁政権による弾圧、クーデターといった政治的背景が本作ではリアルに書かれています。その為、暴力表現や残酷描写が占める割合が多く、苦手な方は控えた方が良いかもしれませんね。著者は凄惨さをあえて際立たせることで、戦争や政権による弾圧の理不尽さを強調したかったのかもしれません。

そして、「サムライの悲しみ」という副題。日本刀や武士の美徳についても作中にエッセンスとして用いられているのも日本人としては嬉しい限りです。こちらはどういった要素として加えられているのか、是非本作を読んでお楽しみください。

本作は気軽に読むタイプではなく、じっくり堪能できる重厚感のある作品です。訳者の宮崎真紀さんも”あとがき”で、「物語も、その世界観も、べてがきわめてスペイン的」と述べられていました。本記事を読んでいただき、スペインミステリーに興味を持たれましたら是非とも本作チェックしていただければと思います。

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