個人的こんな方におススメ♬
こんにちは、RKOです。本日は2019年3月、知念実希人作「レフトハンド・ブラザーフッド」をご紹介します。本作は、「エイリアンハンドシンドローム」という実際に存在する症状を題材にしております。
エイリアンハンドシンドロームとは
自己の意思あるいは意図とは無関係に上肢が動作するなどの運動障害である。「他人の手症候群」とも呼ばれる。道具の強迫的使用や両手間の対立が認められるとされている。 主に前頭葉内側部、脳梁、前帯状皮質、後部頭頂葉などの損傷により生じると考えられている。(Wikipedia)
本作は、事故により死去した双子の兄の魂を左手に宿す主人公が、偶然巻き込まれた殺人事件の真犯人を追う青春サスペンス小説です。
容疑者として逃走しながらも事件解決を目指す二人の前に様々な障害が立ちはだかり、ハラハラした展開が続きますので、ボリュームのある内容ながらも一気に読むことができる作品でした。
ズバリ、この作品は、
概要
左手に宿る“兄”と俺。奇妙な2人の逃避行が始まる―ある事故以来、左手から死んだ兄・海斗の声が聞こえるようになった岳士。家出した2人は殺人事件に巻き込まれ、容疑者として追われるはめに。濡れ衣を晴らそうと奔走する岳士と海斗だが、怪しいドラッグ「サファイヤ」、そして美しい彩夏との出会いで“兄弟”の思惑はすれ違いだす…予想不可能のラスト、切ない衝撃に涙があふれる。 (「BOOK」データベースより)
【公式】紹介映像(文藝春秋)
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RKOの個人的おススメ指数
謎の素晴らしさ: B(ミステリーとしては期待しすぎない方が良いかも)
文章構成: B(エイリアンハンドシンドロームという設定をうまく活用されています。)
登場人物: B(主人公の自暴自棄な行動には疲れます)
読みやすさ: A(ボリュームはありますがハラハラした展開が続くので一気に読めました)
再読したい度: B(普段の医療ミステリーとは毛色が違います)
青年の成長を描いた「青春サスペンス」でした。
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感想
左手に兄の魂を宿した主人公が偶然殺人事件に巻き込まれてしまい、容疑者として警察から追われてしまいます。主人公・岳士(弟)は、エイリアンハンドシンドロームの治療を拒否し左手に宿る兄・海斗と共に家出したため、警察に届け出ることができません。そのため独自に真犯人を探すことになります。
本作では、エイリアンハンドシンドロームという題材をうまく活用した作品です。左手に宿る兄は自分の頭が作り出した幻覚なのか、或いは本当に自我に目覚めた独立した存在なのか。作中ではこの症状に悩む主人公・岳士の心境を非常に緻密に描写しています。左手に死んだ兄が宿るきっかけになった事故を徐々に明らかにすることで、岳士の自責や後悔の念が少しずつ伝わってきました。それだけに「ラストで2人はどうなってしまうのだろうか」と気になって最後まで一気に読み進めることができました。
また、ドラッグの依存症という恐怖についても非常にリアルに描かれており、ドラッグが引き起こす禁断症状や依存症から抜け出すことの難しさが高い緊迫感と共に表現されております。こういった小説を読んで改めて危険薬物の怖さを再認識しますね。
左手の兄と共に事件解決を目指すという不思議なブラザーフッド小説。読み進めるほど2人の行く末が気になる青春サスペンスでした。果たして2人にはどういった結末が用意されているのか。興味を持たれた方は是非ともチェックされてはいかがでしょうか。