『ぼくを忘れないで/ネイサン・ファイラー』:コスタ賞新人賞・大賞同時受賞作品♬

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個人的こんな方におススメ♬

こんにちは、RKOです。本日は2019年5月刊行、イギリス人作家・ネイサン・ファイラー作の「ぼくを忘れないで」をご紹介します。本作はイギリス・アイルランド在住の作家に与えられる文学賞であるコスタ賞の新人賞と大賞を同時に受賞した作品です。

 

非ミステリー作品ですが、「ぼくを忘れないで」という魅力的な邦題に惹かれて読む事にしました。ちなみに、原題は「The Shock of the Fall」で、読むとタイトルの意味が理解できるようになっています。

 

全体を通じて語り手である19歳の青年の苦しみが痛いほど感じられます。正直なところ、彼の心情を感じながら読み進める必要があるので、読み手もかなりのエネルギーが必要になります。しかしながら、「哀しみ」や「喪失感」の中にもユーモラスな雰囲気も持ち合わせており、どこか心惹かれる物語でありました。

 

ズバリ、この作品は、

『心を揺さぶられる物語を読みたい』人向けです。

 

概要

ぼくには仲良しの兄・サイモンがいた。でも死んでしまった。ぼくはサイモンに会いたくてたまらない。19歳になったマシュー・ホームズは、統合失調症の治療の一環として、自分自身について書いている。大好きだった兄サイモン、ダウン症だった彼の死は、幼かったマシューの思いつきがもたらしたようなものだった。罪の意識に苛まれるマシュー。彼には「ぼくを忘れないで」というサイモンの声がいつも聞こえている。精神科病棟の看護師だった著者だからこそ書ける、病める青年の苦しみ、不安、喜び、そして家族のこと。サイモンとマシューの兄弟を、あなたは忘れることができないだろう。コスタ賞の新人賞と大賞を同時受賞した傑作小説!(「BOOK」データベースより)

 

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RKOの個人的おススメ指数

謎の素晴らしさ: 

文章構成: B(あえてでたらめな順番でエピソードが配置されています)

登場人物: B(彼の独自の視点を通して登場人物が紹介されていきます)

読みやすさ: C(正直読むのは大変)

再読したい度: B(非常に読み応えのある作品です)

おススメ指数 B
読了後に改めてタイトルの重みが感じられる作品。

 

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感想

本作の主人公は19歳の青年、マシュー・ホームズ。彼は幼少期に、大好きな兄・サイモンの死を経験します。兄の死の責任は自分にあると深く思い詰めたマシューは、強い罪の意識に苛まれ、精神的に追い詰められてしまいます。

 

本編はマシューがタイプライターで綴った手記の形式を取っているため、エピソードの時間軸もバラバラであり、一貫性もありません。しかしながら、その中でもマシューの兄に対する愛が深く感じ取ることができ、もう二度と兄に会うことができない、という彼の「喪失感」や「苦しみ」が痛いほど理解できます。

 

作者のネイサン・ファイラーは、大学で精神科看護師の資格を取得後、メンタルヘルスの研究に従事されていたそうで、精神医学専門家の視点から主人公のマシューの心情の変化や医師・看護師とのやりとりを詳細に綴っています。彼らの会話にも非常にリアリティを感じ、作品に重みを持たせるきっかけとなっております。

 

兄の死をきっかけに精神的に追い詰められたマシューはどこに向かうのか。彼の苦悩を中心とした物語であるものの、彼と周囲の人達とのユーモラスな会話から、どこか不思議な明るさも感じられる作品です。もしご興味を持たれましたらチェックしていただければと思います。

 

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