個人的こんな方におススメ♬
こんにちは、RKOです。本日は2020年2月刊行、深木章子作「欺瞞の殺意」をご紹介します。
深木章子さんは、東京大学法学部卒、弁護士として活動後、60歳から執筆活動を始められた作家さんです。2010年に『鬼畜の家』で、第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞後、デビューされました。
(参考)鬼畜の家
本作は、無実の罪にも関わらず自白によって40年間投獄された男性と一人の女性との『書簡』による交流から、過去の事件の真実に迫るミステリーです。書簡のやりとりをもとに2人が事件を推理をするいわゆる「多重解決モノ」に分類してもいいかと思いますが、この作品はそれだけに留まらず様々な仕掛けが施されています。
ズバリ、この作品は、
概要
殺人犯として服役していた元弁護士が仮釈放後にある関係者に送った書簡。
それが事件のすべてを根底から覆す引き金となった。
「わたしは犯人ではありません。あなたはそれを知っているはずです」。
(「BOOK」データベースより)
RKOの個人的おススメ指数
謎の素晴らしさ: A(緻密に計算されたロジックを堪能)
文章構成: S(最後までどう転ぶかわからず楽しめます)
登場人物: B(少しキャラが被る登場人物もいたり序盤は少し苦労しました)
読みやすさ: A(淡々と進行しますが、続きが気になってどんどん読み進められます)
再読したい度: S(2週目は違う景色が見えるかも)
おススメ指数 A
書簡のやり取りだけなのにワクワクできるミステリー。楽しめました。
感想
無実の罪にも関わらず「自白」することで、40年間の獄中生活をおくった治重。「自白」は死刑を免れる苦肉の策でした。仮釈放された治重は一人の女性に書簡を送ります。その女性は治重がかつて愛した女性で、逮捕されることになった毒殺事件の現場にもいた燈子でした。書簡にて治重は自分が犯人ではない事、40年間刑務所の中で考えることによって導き出した事件の真相についての持論を語り始めます。
本作の大部分を占める要素が『治重と燈子の書簡のやり取り』です。そのため、物語自体は淡々と進行するのですが、書簡から彼らの事件に対する想い、相手に対する想いが作中から伝わってきます。それだけに、40年間の獄中生活の辛さであったり、好きな人を想う心境であったりと2人の複雑な心境が手に取るようにわかります。この辺りは作者が意図している通りかと思いますが、ラストに向けての伏線として効いてきます。
また、本作は一つの事件の真相を様々な角度から議論する、いわゆる「多重解決もの」に分類されると思いますが、書簡のやり取りというアナログな手段をうまく活用してロジックを構築されています。多重解決ものにありがちな「いや、流石にそれはないだろう」という突飛な推論はほぼなく、シンプルで魅力的な可能性が提示されるので、読者も最後まで集中して読めるように配慮されているようにも感じました。
無実の罪を自白する事によって死刑を免れた男。書簡のやり取りの後にはどんな結末が用意されているのか?もしご興味を持たれた方は是非とも本作をチェックしてみてください。