『紅蓮館の殺人/阿津川辰海』:現代ミステリにおける名探偵の在り方を問う本格ミステリー

個人的こんな方におススメ♬

 

こんにちは、RKOです。本日は2019年刊行、阿津川辰海作「紅蓮館の殺人」をご紹介したいと思います。阿津川辰海さんは東大ミステリ研出身であり、新人発掘プロジェクト「KAPPA-TWO」より2017年にデビューされた新鋭の作家さんですね。

 

本作は、炎に囲まれた館の消失まで35時間、クローズドサークルにおける謎解きとタイムリミットサスペンスが融合した作品です。ロジカルに構築されたトリックは流石ですが、作者のメッセージとして「現代の名探偵の在り方」を議論することで、本格ミステリーにさらに深みを持たせた作品でした。

 

ズバリ、この作品は、

『タイムリミットサスペンスを組み込んだ本格ミステリを読みたい』人向けです。

 

概要

 

山中に隠棲した文豪に会うため、高松の合宿をぬけ出した僕と友人の葛城は、落雷による山火事に遭遇。救助を待つうち、館に住むつばさと仲良くなる。だが翌朝、吊り天井で圧死した彼女が発見された。これは事故か、殺人か。葛城は真相を推理しようとするが、住人と他の避難者は脱出を優先するべきだと語り―。タイムリミットは35時間。生存と真実、選ぶべきはどっちだ。(「BOOK」データベースより)

 

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RKOの個人的おススメ指数

 

謎の素晴らしさ: A(綿密に練られたロジックは流石の一言)

文章構成: A(ワトソン役を語り手とした伏線の構築は◎)

登場人物: B(探偵のかつての名探偵の信念がぶつかり合います)

読みやすさ: A(タイムリミットサスペンスとしても楽しめました)

再読したい度: B(安易なシリーズ化は無いだろうな・・・)

おススメ指数 A

綿密に構築されたロジックを堪能。ただ、好みは分かれる作品かな?

 

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感想

 

高校生探偵・葛城と友人の田所は、高校の勉強合宿を抜け出して、憧れである社会派ミステリ作家財田雄山(たからだゆうざん)が住む屋敷「落日館」を目指します。その道中、落雷によって発生する山火事に遭遇した二人は、落日館に避難することに。屋敷では、寝たきりになった雄山とその家族、二人の他に避難してきた人達が集まります。その中の一人で保険調査員・飛鳥井の存在に田所は動揺します。彼女は、かつて田所が探偵を目指したきっかけとなった名探偵でした。炎が迫る落日館で、その夜一つの事件が発生。タイムリミットは35時間、葛城と田所は、事件を解決し、落日館からの脱出を図ります。

 

2017年のデビュー作でもある「名探偵は嘘をつかない」では、「探偵弾劾裁判」という設定を活用し、現代ミステリーにおける探偵の在り方を骨格として組み込んだ作品でした。本作もその色合いが強く、エラリークイーンのような華やかな名探偵ではなく、「現代の名探偵としての在り方」が本作でも作品中の一つのテーマになっております。高校生探偵・葛城と、かつて名探偵であり様々な苦しみを経験した飛鳥井が互いの価値観を通わせる姿は、本作で作者の阿津川さんの情熱が伝わってきました。

 

(過去記事)名探偵は嘘をつかない

rko-book.com

 

タイムリミットサスペンスではありがちな、「推理してる場合か」とツッコミたくなる作品はよくありますが、その辺りは「探偵としての生き方」という部分がうまくクッションとなっており納得性は高いです。高校生探偵の「たとえ死んだとしても事件に向き合う」という、一見青くも見える姿は、かつて名探偵であった飛鳥井との対比によってうまく表現されているように感じました。

 

また、トリックとしても非常に練られており、様々なからくりが施された「落日館」での謎解きと、迫りくる炎からの脱出を図るサスペンス的な部分が調和してバランスが良い作品です。一方、タイトルがタイトルだけに、クローズドサークルでの殺人事件を期待しすぎるとイメージとかけ離れてしまう可能性もあるなと感じました。その辺りは好みが分かれる部分ではないでしょうか。

 

「落日館」というからくりが施された屋敷での本格ミステリー。興味を持たれた方は是非とも本作をチェックしてみてください。

 

 

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