2020年版 本格ミステリ ベスト10のご紹介(国内編)

はじめに

 

こんにちは、RKOです。今回は、去年の年末に発表された「2020年版 本格ミステリ ベスト10」をまとめたいと思います。

 

なお、本格ミステリ・ベスト10は探偵小説研究会編著の推理小説のランキング本で、原書房より毎年12月に発表されています。他のミステリーランキングでは非ミステリー作品もランキングされることもありますが、本格ミステリベスト10では、基本的に本格ミステリーとしての完成度が評価されるランキングです。

 

ランキングの集計方法は、研究会が本格ミステリに関する有識者と考える人々に投票を依頼し、1位から5位を決めてもらう形式です。対象作品は、2018年11月から2019年10月までに刊行された作品です。

 

 

 

本日は、国内編のトップ10をご紹介したいと思います。なお、作家さんやミステリーに精通された方がそれぞれランキングを発表されており、好きな作家さんの好みなども良くわかりますので、興味のある方は上記の冊子を是非お読みください。

 

 

 

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第1位:medium 霊媒探偵城塚翡翠/相沢沙呼

 

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎は、心に傷を負った女性、城塚翡翠と出逢う。彼女は霊媒であり、死者の言葉を伝えることができる。しかし、そこに証拠能力はなく、香月は霊視と論理の力を組み合わせながら、事件に立ち向かわなくてはならない。一方、巷では姿なき連続殺人鬼が人々を脅かしていた。一切の証拠を残さない殺人鬼を追い詰めることができるとすれば、それは翡翠の力のみ。だが、殺人鬼の魔手は密かに彼女へと迫っていた―。(「BOOK」データベースより)

 

「霊媒」と「本格ミステリ」を見事に融合させたミステリー。死者の言葉を伝えることができる霊媒師の女性・城塚翡翠が推理作家・香月史郎とタッグを組み、彼女が読み取ったものから論理を構築するという面白い試みのミステリーです。先入観なしで只々読んでいただきたい作品です。

 

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第2位:魔眼の匣の殺人/今村昌弘

「あと二日で四人死ぬ」閉ざされた“匣”の中で告げられた死の予言は成就するのか。『屍人荘の殺人』待望のシリーズ第2弾!!(「BOOK」データベースより)

 

通常のクローズドサークルに”予言“というSF的な要素を組み合わせながら本格ミステリとして完成させた秀逸な作品でした。前作の屍人荘の殺人は非常にスリリングな作品でした。本作も前作に続き、ミステリー性とエンターテインメント性を見事に両立させた作品でした。次回作も非常に楽しみです。

 

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第3位:紅蓮館の殺人/阿津川辰海

山中に隠棲した文豪に会うため、高松の合宿をぬけ出した僕と友人の葛城は、落雷による山火事に遭遇。救助を待つうち、館に住むつばさと仲良くなる。だが翌朝、吊り天井で圧死した彼女が発見された。これは事故か、殺人か。葛城は真相を推理しようとするが、住人と他の避難者は脱出を優先するべきだと語り―。タイムリミットは35時間。生存と真実、選ぶべきはどっちだ。(「BOOK」データベースより)

 

新人発掘プロジェクト「KAPPA-TWO」から2017年にデビューした阿津川辰海さんの最新作。炎に囲まれた館「落日館」を舞台とした本格ミステリーです。高校生探偵とかつて名探偵であった女性が事件を通じて自らが描く探偵像をぶつけ合うことで、読者に対しても「現在の探偵の在り方」を問う作品であるように感じました。

 

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第4位:刀と傘 明治京洛推理帖/伊吹亜門

維新に揺れる明治の京。奇怪な謎に挑むのは、尾張出身の若き武士と初代司法卿江藤新平。死刑執行当日、なぜ囚人は毒殺されたのか?第12回ミステリーズ!新人賞受賞作「監獄舎の殺人」に連なる時代本格推理、堂々登場。(「BOOK」データベースより)

 

歴史好き、且つミステリー好きにとって非常に魅力的な作品です。江戸から明治期の時代設定を活用した本格ミステリが展開されており、連作短編集ながら非常に読み応えのある作品でした。江藤新平という明治維新で活躍した実在の人物を主人公に据え、リアリティの高い歴史小説としても楽しむことができます。

 

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第5位:そして誰も死ななかった/白井智之

覆面作家・天城菖蒲から、絶海の孤島に建つ天城館に招待された五人の推理作家。しかし館に招待主の姿はなく、食堂には不気味な泥人形が並べられていた。それは十年前に大量死したミクロネシアの先住民族・奔拇族が儀式に用いた「ザビ人形」だった。不穏な空気が漂う中、五人全員がある女性と関わりを持っていたことが判明する。九年前に不可解な死を遂げた彼女に関わる人間が、なぜ今になってこの島に集められたのか。やがて作家たちは次々と奇怪を死を遂げ、そして誰もいなくなったとき、本当の「事件」の幕が開く。驚愕の本格推理。ミステリ界の鬼才が放つ、新世代の「そして誰もいなくなった」!(「BOOK」データベースより)

 

アガサクリスティの名作「そして誰もいなくなった」のタイトルに掛けた『新感覚クローズドサークル・ミステリー』。エログロミステリーの名手である白井さんの作品なのに「誰も死なない」? そう思って読み始めた時点で既に作者の罠にはまっていました。「まだまだこんな引き出しがあるのか」と言わずにはいられない、クローズドサークルの魅力が詰まった作品です。

 

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第6位:或るエジプト十字架の謎/柄刀一

トランクルームの密室。白い粉が舞い散る殺人現場。足跡なき泥濘の逃亡者。案内板に磔にされた首のない死体―。南美希風が、奇跡を偽装した不可能犯罪の数々に挑む!世界法医学交流シンポジウムのために来日したアメリカ人法医学者エリザベス・キッドリッジ。美希風にとって、彼女は恩人の娘にあたる。法医学のための実地検分として、謎めいた事件現場に赴くエリザベスと、ガイド役として付き添う美希風は、神の悪戯としか思えない不可能犯罪を解明できるのか!?(「BOOK」データベースより)

 

エラリー・クイーンの国名シリーズタイトルを題材とし、日本国内を舞台としたミステリーとして書き上げた作品。「ローマ帽子の秘密」や「フランス白粉の秘密」など、各話タイトルに入っているキーアイテムが事件に関わってきますので、国名シリーズ好きは一層楽しむことができるでしょう。

 

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第7位:時空旅行者の砂時計/方丈貴恵

瀕死の妻のために謎の声に従い、二〇一八年から一九六〇年にタイムトラベルした主人公・加茂。妻の先祖・竜泉家の人々が殺害され、後に起こった土砂崩れで一族のほとんどが亡くなった「死野の惨劇」の真相の解明が、彼女の命を救うことに繋がるという。タイムリミットは、土砂崩れがすべてを呑み込むまでの四日間。閉ざされた館の中で起こる不可能犯罪の真犯人を暴き、加茂は二〇一八年に戻ることができるのか!?“令和のアルフレッド・ベスター”による、SF設定を本格ミステリに盛り込んだ、第二十九回鮎川哲也賞受賞作。 (「BOOK」データベースより)

 

今年度の鮎川哲也賞作品は7位にランクイン。京大ミステリ研出身の作者が描くタイムトラベルミステリーです。「タイムトラベル」という本来本格ミステリでは御法度な展開ながらも、その設定をうまく活用してしっかりと本格ミステリとして成り立っているというのは流石です。読者への挑戦状などミステリファンのツボを押さえるポイントが満載で、作者さんの本格ミステリ愛を垣間見る事ができます。

 

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第8位:予言の島/澤村伊智

瀬戸内海に浮かぶ霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子が生涯最後の予言を遺した場所だ。彼女の死から二十年後、“霊魂六つが冥府へ堕つる”という―。天宮淳は幼馴染たちと興味本位から島へ向かうが、宿泊予定の旅館は、怨霊が下りてくるという意味不明な理由でキャンセルされていた。そして翌朝、幼馴染のひとりが遺体となって発見される。しかし、これは予言に基づく悲劇のはじまりに過ぎなかった。不思議な風習、怨霊の言い伝え、「偶然」現れた霊能者の孫娘。祖母の死の真相を突き止めに来たという彼女の本当の目的とは…。あなたは、真実に気づくことができるか―。比嘉姉妹シリーズ著者初の長編ミステリ。(「BOOK」データベースより)

 

独特の不気味さを有する作品に定評がある澤村伊智さんの長編ミステリーがランクインしました。「予言」や「未来予知」をテーマとした作品は近年多く発表されておりますが、そういったレールが用意されている中でも「何が起こるんだろう」と終始期待感を持てる作品でした。着地点が最後まで読めない本格ミステリーです。

 

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第9位:むかしむかしあるところに、死体がありました。/青柳碧人

鬼退治。桃太郎って…えっ、そうなの?大きくなあれ。一寸法師が…ヤバすぎる!ここ掘れワンワン埋まっているのは…ええ!?昔ばなし×ミステリ。読めば必ず誰かに話したくなる、驚き連続の作品集!(「BOOK」データベースより)

 

日本昔ばなしを題材とした本格ミステリー5編を収録した短編集です。日本昔ばなしをベースとしつつも、あくまで中身は本格ミステリー。昔話のキー要素をうまく利用することにより、5編全ての物語が良質のミステリーに仕上がっています。「昔ばなし」と「ミステリー」という一見ミスマッチな組み合わせの要素を見事に融合させた作品です。

 

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第10位:潮首岬に郭公の鳴く/平石貴樹

函館で有名な岩倉家の美人三姉妹の三女が行方不明になった。海岸で見つかった遺留品のそばに、血糊のついた鷹のブロンズ像。凶器と思われたこの置き物は、姉妹の家にあったものだった。祖父は家にある芭蕉の短冊額のことを思い出す。一つ家に 遊女も寝たり 萩と月。旅に病んで 夢は枯野を 駆け廻る。鷹ひとつ 見つけてうれし 伊良湖崎。米買ひに 雪の袋や 投頭巾。俳句に見立てた殺人事件なのか?三女の遺体が見つかっても、犯人の手掛かりは得られないまま、事件は新たな展開をみせる―。三女が行方不明になったときから、謎は始まった。(「BOOK」データベースより)

 

函館を舞台とした美人三姉妹を巡るミステリー作品です。美しい装丁に目を奪われる本作ですが、刑事の聞き込み捜査が大半で、捜査資料のような平坦な描写が続く、という非常に地味な展開が続きます。しかしながら、中身はしっかりとした本格ミステリーで、本格ミステリファンにとっては充実感を得られる内容ではないでしょうか。

 

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さいごに

 

2020年版も、若手新鋭作家の作品が多数ランクインし、日本の本格ミステリー界の明るい未来が見えた1年でした。特に「予言」や「未来予知」といった特殊設定をうまく活用したクローズドサークルミステリーが多く発表されており、各作家さんの苦労がうかがえますね。

 

また、1位の相沢沙呼さん、2位の今村昌弘さん、7位の方丈貴恵さん[本作が受賞作]といった「鮎川哲也賞受賞者」の活躍も目立ちましたね。

 

個人的には、特に「1位のmedium」と「2位の魔眼の匣の殺人」に関しては、純粋に作品として楽しめました。また、「9位のむかしむかしあるところに、死体がありました」はこれまで読んだことがない「日本昔ばなしとミステリーの掛け合わせ」が新鮮に感じて面白かったですね。

 

2020年も新しい作品がどんどん発表されておりますので、次回も期待したいと思います。

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