個人的こんな方におススメ♬
こんにちは、RKOです。本日は2020年2月刊行、稲羽白菟作「仮名手本殺人事件」をご紹介します。
本作は歌舞伎の演目『仮名手本忠臣蔵』の舞台上で起こる殺人事件の裏に隠された真相を推理する本格ミステリー作品です。歌舞伎に興味がある方にとっては非常に魅力溢れる作品となっています。
ズバリ、この作品は、
概要
舞台上で命を落とした役者と桟敷席から姿を消した客の死。
席に残された三枚のカルタは何を意味するのか。
そして「死の繭」とは―。気鋭が描く長編本格推理。
(「BOOK」データベースより)
RKOの個人的おススメ指数
謎の素晴らしさ: B(歌舞伎の知識が無いと正直トリックは解けないかも)
文章構成: A(様々な伏線が最後に効いてきます)
登場人物: C(探偵役が少し地味な印象)
読みやすさ: B(序盤の歌舞伎の舞台は好きじゃないと辛いかも)
再読したい度: B(歌舞伎の勉強になりました)
おススメ指数 B
歌舞伎の勉強になりました。「死の繭」など様々なキーアイテムが効果的に使われています。
感想
改築の為、取壊しを予定している『歌舞伎座』。この歌舞伎座で行われた演目「仮名手本忠臣蔵」の舞台上で芳岡仁右衛門が毒殺される事件に遭遇します。この舞台を見ていた文楽の三味線方の冨澤弦二郎は、劇評家の惣右介と共に事件の真相に迫ります。事件当日に同じ場所で死んだ、頬に傷のある「謎の男」、謎の男が飲みこんでいた「死の繭」、事件現場に残された「三枚のかるた」、複雑に絡み合う謎が一つの線につながった時、驚きの真相が浮かび上がります。
本作のテーマは「歌舞伎」、稲羽さんの過去作には「文楽」をテーマにしたものもあり、古典芸能に対する造詣の深さを感じます。本作でも歌舞伎の演目や舞台を活用したトリックが用意されています。正直なところ、歌舞伎に対して理解が無い私には本作のトリックは非常に難しいものでした。一方で、わかりやすく解説もされていますので、歌舞伎を知らなくても世界観を楽しむことができますし、勉強にもなる作品です。
また、本作で扱われている演目「仮名手本忠臣蔵」のエッセンスが本作では見事に料理されています。江戸時代の赤穂浪士の事件を題材にしているのですが、当時は武家社会の出来事を題材にする事が禁止されており、鎌倉時代の出来事として描かれているんですね。恥ずかしながらそれすら知らなかったです。この演目と作中での歌舞伎一門の物語がうまくリンクしていて、歌舞伎に対する興味も沸いてきました。
仮名手本忠臣蔵を題目に本格ミステリーとして仕上げた本作。もしご興味を持たれた方は是非とも本作をチェックしてみてください。