『深淵の怪物/木江恭』:人の心の奥に眠る怪物を呼び覚ます短篇集

個人的こんな方におススメ♬

 

こんにちは、RKOです。本日は2019年11月刊行、木江恭作「深淵の怪物」をご紹介します。本作は「第39回小説推理新人賞・奨励賞」に選ばれた「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」を含む四編を収録した短篇集です。

 

4編全て「人間の心の弱さと闇」を丁寧に描いた作品で、独立した物語でありながらテーマが一貫しているため、非常に読み応えのある短篇集に仕上がっております。

 

ズバリ、この作品は、

『人間の深淵を丁寧に描いた作品に興味がある』人向けです。

 

概要

 

娘の裸体写真を遺して死んだ美術教師。事件を追う優希は、ある少女の存在を思い出し―。心に住むのは怪物か、己の本質か?第39回小説推理新人賞奨励賞作品を含むデビュー短篇集。(「BOOK」データベースより)

 

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RKOの個人的おススメ指数

 

謎の素晴らしさ: B(ミステリーとしての味付けもちょうど良く)

文章構成: B(各話シンプルにまとめられながら読み応えもあります)

登場人物: A(誰もが心の奥底に怪物が眠っていると感じてしまいます)

読みやすさ: A(デビュー作ながらも非常に読みやすく没入できます)

再読したい度: B(次回作も期待したいですね)

おススメ指数 B

本作がデビュー作とは思えない、人間の感情の揺れを丁寧に描いた作品集です。

 

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感想

 

本作は、「第39回小説推理新人賞・奨励賞」に選ばれた「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」の他に、兄を殺された弟が死の真実を追い求める「人でなしの弟」、海辺の町で起きた殺人事件に隠された真相を人間関係から紐解く「さかなの子」、交通事故を目撃した相貌失認症の主人公が事故の裏に潜む謎を解く「メーデーメーデー」と4編ともに、高いクオリティの物語を堪能することができます。

 

ミステリーを一つの軸としながらも、作品のテーマである「人の心の奥底に眠る怪物」が徐々に姿を表していく様に「怖さ」を感じました。それぞれ人には自分自身の自我が存在し、その自我を維持するために周囲に危害を加えてしまう事があります。この作品集ではその部分が強く切り取られているのですが、日々普通に生活している我々の中にも「闇」が存在し、場合によっては登場人物達のようになってしまう可能性があるんだな、と強く感じられる作品でした。

 

個人的に一番好きだった作品は「さかなの子」です。海辺の町で起きた殺人事件を中学校教師の視点から描かれているのですが、各登場人物それぞれの自我がぶつかりあう事で物語は思いもよらない着地点を迎えます。4作の中でもミステリー色が強めではありますが、謎が解けた後の結末がなんとも言えません。是非とも読んでいただきたい作品でした。

 

「深淵の怪物」をテーマとした4編を収録した短篇集である本作。独立した物語でありながらも各話読み応えもあり考えさせられる作品集です。もしご興味を持たれた方は是非とも本作をチェックしてみてください。

 

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