『潮首岬に郭公の鳴く/平石貴樹』:函館を舞台とした本格ミステリ作品

個人的こんな方におススメ♬

 

こんにちは、RKOです。本日は2019年刊行、平石貴樹作「潮首岬(しおくびみさき)に郭公(かっこう)の鳴く」をご紹介したいと思います。北海道・函館を舞台とした本格ミステリー作品です。

 

作者・平石貴樹さんの地元である函館を舞台としたミステリーである本作。美しい装丁が目を引きますが、中身はしっかりとした本格ミステリ作品でした。

 

ズバリ、この作品は、

『良質の本格ミステリを楽しみたい』人向けです。

 

概要

 

函館で有名な岩倉家の美人三姉妹の三女が行方不明になった。海岸で見つかった遺留品のそばに、血糊のついた鷹のブロンズ像。凶器と思われたこの置き物は、姉妹の家にあったものだった。祖父は家にある芭蕉の短冊額のことを思い出す。一つ家に 遊女も寝たり 萩と月。旅に病んで 夢は枯野を 駆け廻る。鷹ひとつ 見つけてうれし 伊良湖崎。米買ひに 雪の袋や 投頭巾。俳句に見立てた殺人事件なのか?三女の遺体が見つかっても、犯人の手掛かりは得られないまま、事件は新たな展開をみせる―。三女が行方不明になったときから、謎は始まった。(「BOOK」データベースより)

 

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RKOの個人的おススメ指数

 

謎の素晴らしさ: A(タイトル含めて美しい装丁ですね)

文章構成: B(最後の解決編は楽しめました)

登場人物: C(人物が多いし、覚えるのは大変です)

読みやすさ: C(刑事の事情聴取を模した形式で続くので正直読むのは大変でした)

再読したい度: B(函館物語は続くのでしょうか。)

おススメ指数 B

捜査資料を読まされているような場面が続きますが、本格ミステリとしては充分楽しめました。

 

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感想

 

函館では有名な岩倉家の美人三姉妹・三女が行方不明になります。海岸で見つかった遺留品の中に、かつて岩倉家にあった「鷹のブロンズ像」が・・・。祖父の松雄は、以前付き合いのあった”ある人物”から譲り受けた、「松尾芭蕉の俳句が書かれた短冊」を思い出します。その中の一つには「ひとつ 見つけてうれし 伊良湖崎」と鷹をモチーフとした俳句がありました。残りの俳句はあと3つ。更に犯人による凶行が行われるのか?のどかな函館の田舎町を舞台に凄惨な事件が幕を開けます。

 

本作の特徴は、ほぼ全編を通して刑事である俊介による地道な聞き込み捜査のパートが続くことでしょう。本格ミステリとしては非常にフェアであり、読み進めることで読者は真相に辿り着くことができるよう丁寧に構築されている印象を受けました。一方で、警察の捜査資料をひたすら読まされているような平坦な描写が続きますので、退屈に思われる方も多いかな?と個人的には感じました。ただ、解決編ではそこまでの伏線をひたすら回収していきますので、地道に読みこめば最後には報われるように構成されています。

 

また、本作では俳句による見立て殺人がテーマとなっており、作中の随所にみられる工夫(ネタバレになるので割愛)からも横溝正史作品をかなり意識しているのがわかります。しかしながら、あえて時代背景を現代とし、現代版の横溝正史オマージュとした事は良かったのではないでしょうか。最後の最後まで焦らされますが、読み終わった時の読後感としては充実したものでした。

 

函館を舞台とした非常にフェアな本格ミステリーである本作。最後の最後に驚愕の真相が用意されています。もしご興味を持たれた方は是非とも本作をチェックしてみてください。

 

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