個人的こんな方におススメ♬
こんにちは、RKOです。本日は2020年4月刊行、我孫子武丸作「修羅の家」をご紹介します。
帯には「『殺戮に至る病』を凌ぐ驚愕作」という超魅力的なキャッチフレーズ。これは買わずにはいられないという事で手に取りました。ちなみに、「殺戮に至る病」は我孫子武丸さんの代表作であり、日本のミステリ史にも残る衝撃作です。未読の方は是非ともネタバレを見ずに手に取ってみてください。ただ、非常に猟奇的な描写が多いため、グロ耐性がない方は読まない事をおススメします。
殺戮に至る病/我孫子武丸
本作も「殺戮に至る病」を読んだ時の「あの強い嫌悪感を感じさせるおぞましい作品」でした。おそらく実在の事件(後述します)をモデルに描かれているんですが、そこに我孫子作品でしか味わえない不快感、嫌悪感がうまく味付けされて、非常にリアリティの高い「イヤな作品(褒め言葉)」に仕上がっています。
ズバリ、この作品は、
概要
『殺戮にいたる病』を凌ぐ驚愕作!この家は悪魔に乗っ取られた。恐怖、嫌悪、衝撃。そこは地獄。初恋の女性を救い出せるのか。女の毒が体内に入り、蝕まれていく――
簡易宿泊所で暮らす晴男はレイプ現場を中年女性・優子に目撃され、彼女の家につれていかれる。
そこには同じ格好をした十名ほどが「家族」として暮らしていた。
おぞましい儀式を経て一員となった晴男は、居住者は優子に虐待されていることを知る。
一方、区役所で働く北島は、中学時代の初恋相手だった愛香と再会し「家族」での窮状をきく。
北島は愛香を救い出す可能性を探るが、“悪魔”が立ちはだかる。
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RKOの個人的おススメ指数
謎の素晴らしさ: S(色んなミステリーを読んできましたが、久しぶりに「ピュアに」驚きました。)
文章構成: B(なるほど、そう来ましたか・・・)
登場人物: S(一瞬、悪魔に取り込まれそうになりました。)
読みやすさ: A(続きが気になって仕方がない。猟奇的な描写も多いのでご注意ください)
再読したい度: S(再読したいような、したくないような・・・)
おススメ指数 A
読みながら「修羅の家」に取り込まれそうになる不思議。
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感想
26歳でその日暮らしの「晴男」は、公園でのレイプ現場をたまたま通りかかった中年女性・優子に目撃されます。家に誘われた晴男は優子の家で異様な光景を目にします。その家には10人ほどの様々な年代の人達が同じ服を着て「家族」として暮らしていました。新たに「家族」の一員として暮らすことになった晴男は、この家で居住者達が優子に様々な虐待を受けている事を知ります。どうしてこのような「家族」が形成されてしまったのか? 「修羅の家」から抜け出す方法はあるのか? 次第に悪魔に蝕まれていきます。
本作では、家長である優子の狂気が全編を通して描かれており、この家で暮らすことになった「晴男」や、居住者の一人・愛香にかつて恋心を抱いていた区役所職員「北島」の目線から、読者も強く感じられるように仕掛けられています。特に居住者である「晴男」の視点からみると、居住者達の目線から「抗う事のできない絶望感」が伝わってきて、読んでいるこちらも麻痺してしまいそうになります。読みたくないけど読んでしまう。強い嫌悪感が癖になる作品である事は間違いないかと思います。
また、本作を読みながら、かって話題となった「北九州監禁殺人事件」を思い出しました。7人が殺害されたこの実在の事件では、首謀者はマインドコントロールを行うことで、自分の手は汚さず殺人をさせるという恐ろしいやり口が明らかとなりました。後に関わった被害者から「王様と奴隷」のような関係性であった事が語られています。(改めてWikipediaを見ても複雑すぎて全容を理解できません)実際に起きた事件であるという事が未だ信じられませんが、本作を読んで「傍から見ると有り得ないように感じても、当事者にとってはそうではないんだな」という事が少なからず理解できました。
「『殺戮に至る病』を凌ぐ衝撃作」というそれ自体が衝撃であるキャッチフレーズがつけられた本作。個人的には「殺戮に至る病」に受けた衝撃を超える事はなかったですが、本作も衝撃の作品である事は間違いないかと思います。人間の恐ろしさ・狂気が本作には詰まっています。なお、猟奇的な描写が多いので苦手な方はご注意ください。もしご興味を持たれた方は是非とも本作をチェックしてみてください。