『最悪の館/ローリー・レーダー=デイ』:全てが最悪、後は這い上がるだけ

個人的こんな方におススメ♬

 

こんにちは、RKOです。本日は、2020年4月にハヤカワポケットミステリより刊行、ローリー・レーダー=デイ作「最悪の館」をご紹介します。ちなみに、原題は「Under A Dark Sky」です。

 

邦題から想像すると、「館系の本格ミステリー」なのかなと思いましたが蓋を開けると中身は全く違いました。事故で夫を亡くした女性が、生前夫が用意していた結婚記念日の旅行に出向いた作で遭遇した悲劇が描かれます。ゲストハウスで起こる殺人事件、信用できない語り手達、誰が嘘をついているのかを突き止めるフーダニットミステリーでした。

 

ズバリ、この作品は、

『良質のフーダニットミステリーを楽しみたい』人向けです。

 

概要

 

夫を事故で亡くして以来、不眠に苛まれているイーデンは、星空の保護区として有名なダークスカイ・パークを結婚記念日直前に訪れる。生前の夫が予約していたのだ。
だがゲストハウスで別のグループと同宿を余儀なくされることに。
彼らはマロイという魅力的な男性を中心とした同窓の面々だった。
その夜、何者かに彼が殺され、疑心暗鬼に陥る宿泊者たち。
そしてイーデンは思いがけないことを指摘される…ジェフリー・ディーヴァー絶賛の、誰一人として信じられないフーダニット。
アンソニー賞受賞作(「BOOK」データベースより)

 

 

RKOの個人的おススメ指数

 

謎の素晴らしさ: B(信用できない語り手達とフーダニット)

文章構成: C(ある程度先が読めてしまうかな・・・)

登場人物: B(人の内面を理解するのは難しい)

読みやすさ: B(心理描写が肝になっていて読み応えがありました)

再読したい度: B(少しずつ自己開示していく流れは楽しめました)

おススメ指数 B

アンソニー賞受賞作。主人公が「事件の容疑者達とつながりがない」という設定がうまくいかされています。

 

 

感想

 

交通事故で夫を亡くしたイーデン。結婚記念日直前に夫が生前予約していたゲストハウスに一人訪れますが、そのゲストハウスを予約していた別の若者グループと共同生活をおくることに。彼らはマロイという魅力的な青年を中心とした仲のいい6人組でした。ところが、その夜彼らはマロイがスクリュードライバーで殺害されているのを発見します。誰がマロイを殺したのか?疑心暗鬼になる若者達。何故夫はこのゲストハウスを予約したのか?彼らと関係があるのか?イーデンは過去の苦悩と闘いながら、事件の真相を追い求めます。

 

タイトルからして、「館モノのクローズドサークルなのかな?」と勘違いしそうですが、中身は「信用できない語り手によるフーダニットミステリー」でした。何故夫は結婚記念日直前にゲストハウスを予約していたのか?同じゲストハウスに宿泊している若者達と関係しているのか?謎が謎を呼ぶ展開にどんどん読み進める事ができる作品です。

 

本作では、被害者の友人がいわゆる「信用できない語り手」として登場します。主人公であるイーデンと彼らはゲストハウスで初めて出会う為、彼らにとってはイーデンが容疑者となるわけです。その為、初めから自己開示してくれるわけではなく、表面上の事しか聞き出すことができません。ところが、彼らとの接点が増え、関係性が深まる事で様々な事情が明らかになってきます。この辺りの心理的描写が非常に良くできているように感じました。イーデンが部外者で且つ容疑者である事からこのような仕掛けが可能になっています。

 

信用できない語り手によるフーダニットミステリーである本作。果たしてマロイは誰に殺されたのか?何故イーデンの夫はゲストハウスを予約していたのか?もしご興味を持たれた方は是非とも本作をチェックしてみてください。

 

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